ノンコンタクトタイム運用の土台 ——「学年で離れて話す」
梅圃幼稚園では3〜5歳の以上児と、0〜2歳の未満児で体制を分け、それぞれのクラスを学年を超えてお互いにカバーしたり、合同で2クラスを見守りしたりしながら、 子どもの保育業務から離れて他の業務や話し合いの時間を作り出しています。
ノンコンタクトタイムとは?
保育者がこどもと直接関わる「保育業務(コンタクトタイム)」以外の時間を、勤務時間内に計画的に確保する取り組みです。
園児から物理的に離れ、業務を集中して行う時間を指します。
また、毎日14:30からは全クラスの担任が集まる終礼を行っており、子どもの様子、行事の進捗、翌日の予定を短時間で共有し、情報を園日誌に残すことで全職員が共通理解を持てるようになっています。
さらに、月1回、学年の全職員(補助含む)が集まる「学年会議」を勤務時間内に設定し、子どもの様子を共有しながら保育を振り返ります。
学年会議を実施する際は、未満児の先生、保育士資格・幼稚園教諭免許の両免許を持っている先生、研修を受けたりした事務の先生が保育や保育補助に入るなど、学年を越えて支え合う体制が定着しています。
「集中して話す時間」が、保育の質を底上げする
梅圃幼稚園が特に重視しているのは、「全員が同じ温度感で保育を考えること」です。ノンコンタクトタイムによって、次のような変化が生まれました。
① 保育の「ねらい」が一致する
その場に全員が集まり、子どもの様子や保育方針を具体的に話し合うことで、保育のねらいや援助方針を共有できるようになりました。 誰か一人だけが理解している状態を避け、チーム全員で同じ方向を向くことができます。
② 多角的な視点が生まれる
保育中には見落としてしまう視点を共有できること、1年目や補助の先生も意見が言いやすくなることも大きな変化です。 少人数で集まる時間は、1年目の先生にとって相談のハードルを下げます。 「ここが不安」「こう関わってみたい」を素直に言葉にでき、経験者から具体的なアドバイスをもらって前向きに保育へ戻れる実感が生まれています。 また、補助の先生からも積極的に意見が出て、「普段は意見を言わない先生が、話し合いでは『こう思う』と発言してくれる。 それが子どもへの関わりの幅を広げてくれる」と、クラス運営に多面的な視点が入り、単なる業務効率化ではなく保育の質の向上ができました。
③ チーム保育が深まる
終礼で共有された情報は全職員が読める園日誌に記録されます。
「広場にどんぐりが落ちている」といった些細な情報まで全学年に伝わり、子どもへの声かけや活動のヒントとして活かされています。 こうした積み重ねが、自然と連携の強いチームづくりにつながっています。学年を超えた連携が自然に生まれています。
コミュニケーションが、職場を軽やかに
園では「ほっとタイム」という時間があり、お茶やお菓子を用意し、同じ立場の職員が集まって一息つける場をつくっています。
お茶やお菓子を囲みながら、小さなグループで話すこの時間は、自然と職員間のコミュニケーションを深め、若い先生の相談や悩みの打ち明けにもつながっています。 雑談をしているはずが、いつのまにか保育の話に戻っている——というのが先生方の実感です。 仕事が好きで、子どもの笑顔に手応えを得る——その“好き”を支える下支えが、ノンコンタクトタイムなのだと感じます。
心のゆとりが、子どもの笑顔につながる
園長先生は「職員数の積み上げが、ノンコンタクトタイムを可能にした」と語ります。 創設当初は余裕がなく実施が難しかったものの、結婚や出産などの生活スタイルの変化に合わせて、育児休暇や、職場復帰後も短時間勤務を数年続けたのちフルタイムに戻るなど、家庭と仕事の両立を目指して環境を整え、働き続けられる職場づくりに努め、人員強化を進めてきました。
先生方は、「園生活は子どもと大人が一緒につくるもの」という視点を大切にしています。
このように働き方を改善する下地が整ったことで保育者の心のゆとりや余裕が生まれ、それがより良い保育へとつながり、子どもの安心や笑顔にもつながる循環をつくり出しているのです。
離れて整えるから、現場がもっと近くなる
ノンコンタクトタイムは、単に「早く帰るための時間」ではありません。
担任が子どもから一度離れ、落ち着いて保育を振り返り、同僚と話し合い、心身を整える時間です。その積み重ねが、再び子どもたちと向き合う力を生みます。
出産・育児・介護。保育者のライフステージはめまぐるしく変わります。そのたびに仕事を続けることが難しくなり、やむを得ず職場を離れてしまう―― そんな「当たり前」を変えるため、今回取材した認定こども園しんよこえでは働き方の仕組みを職員主体で作り上げていました。
その核となるのが〈土曜フリー出勤〉〈時短勤務〉〈30分有給〉の三本柱。いずれも現場の課題意識から生まれ、毎年の振り返りで改善される“生きた制度”です。
土曜フリー出勤 —— クラスでやりたいことをタイミングよくできる
認定こども園しんよこえでは、土曜フリー出勤の制度を取り入れています。
土曜フリー出勤とは、年間の土曜の出勤日数が決まっている中で、学年によってそのうちの1〜2日を保育を担当せず、他の業務に当てられる制度です。
土曜フリー出勤の背景には、延長保育まで続く日常の中ではクラスや学年の職員全員でまとまった時間を確保しにくいという課題がありました。 発表会や行事準備、小学校との連携書類、保育方針のすり合わせなど「子どもがいる時間には進まない仕事」は多い。 そこで職員自身が「どうすれば働きやすく、より質の高い保育ができるか」を話し合い、制度化していきました。

土曜日は子どもの人数が少ないため、保育に入る担当とフリー出勤の業務を分け、フリー出勤の職員は保育以外の業務に集中できるようにというのが土曜フリー出勤の特徴です。
業務に必要な時間はクラスや学年ごとに異なり、年長クラスは行事が多い分、時間を多めに確保。 担任同士が「いつ話し合う?」「この行事前に準備をしたい」などと自律的にスケジュールを組み、2時間みっちり作業する場合もあれば、30分だけ話し合うケースもあり、必要に応じて必要な時間を確保しています。
5歳児を受け持つH先生は「働きやすさが全然違う」と語ります。制度導入後、時間の確保や平日の業務負担が大幅に減りました。
フリー出勤ができるようになってからは、クラスや学年全員で「この日出てこよう」と決めて、発表会の準備や遠足の下見などに使えるようになり、働き方が良くなったのはもちろん、保育の内容も充実させることができるようになりました。
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[ 土曜フリー出勤の管理簿 ]
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[ 産休中の先生が職場復帰の相談に ]
時短勤務 —— 復帰しやすさが、職場全体の働き方を変える
時短勤務制度は、育休からの“戻りやすさ”を大きく変えました。 二児の母であるI先生は、8:30〜16:30勤務。「朝の送迎や夕方の子どもとの時間を考えると、この1時間の短縮が大きい。このおかげで仕事を続けられている実感があります」と話します。
時短勤務を取り入れる前は、出産・育児を期にパート勤務に切り替えたり、保育者を辞める方もいましたが、ここ最近はみなさん育休を終えても正規職員として戻ってきています。
主任のT先生は、育休取得人数や復帰予定者に合わせてクラス構成・人員配置を調整。今いる職員が無理をしなくても業務を実施できる体制を作っています。
これにより「保育者として現場に戻る」という選択が現実的となり、今では4名が時短勤務で働いています。
30分有給 —— “少しだけ時間が必要”に応える
「一時間はいらない、三十分で足りる」。その生活実感を制度に落としたのが、30分単位の有給です。 子育て・介護の職員からの声を受け、1時間単位の有給では“余り時間”が発生してしまう課題を職員間で議論。 給与計算の煩雑さを懸念する声もあったが、ニーズの強さと事務方の協力で導入が実現しました。
家族を介護中のY先生は、11月から早番・遅番なしの8:00〜17:00の固定勤務で働いています。 「辞めるかパートに降りるか」と迷った時期もありましたが、固定勤務と30分有給を組み合わせることで継続を選べました。 たとえば病院などの送迎には1時間の有休ではなく、30分で事足りるという場面も多く、そんな時にこの30分有給は非常に便利な制度です。
現場がつくる未来
認定こども園しんよこえの制度は「与えられた働き方」ではなく、職員自身が必要に応じて話し合い、自分たちで形にしてきたもの。
土曜フリー出勤は準備の質を高め、時短勤務は復帰と定着を支え、30分有給は細やかな生活ニーズに応える。そしてその周囲には、職員同士が助け合い、改善し続ける文化がありました。
またそれを受け止め、一度やってみようという園長の方針もそれを可能にしていました。
ただ働くための制度ではなく、「続けるための仕組み」。
ライフステージに合わせて働き方を選び、変化とともに成長できる職場づくりが実践されています。
第1回の記事はこちら

























